大きな地図で見る
現地でのエピソード 第八話~術後の入院日数について~ 2019年04月18日

8年ほど前の事ですが、腎移植術後順調に回復され、8日目に現地の病院を退院。その日の夜間便で帰国し、翌日日本の病院へ入院された女性の患者さんから電話が入り、以下の話をされました。
「こちらの看護士長が言うには移植後3週間は何が起こるか分からないので、3週間は安静にしなければならず絶対に退院はさせません」とおっしゃられ、疑問に思い、当時色々と調べてみると意外な事が分かりましたので、お伝えしたいと思います。多くの移植を手掛けている米国を調べると腎移植は5日の入院が標準で余程体調の悪い人以外は5日で退院されるとの事でした。ダメージの大きい肝臓移植でも術後7~10日で退院となります。日本ではどうなっているかと大学病院の先生に聞いてみたら「感染症や拒絶反応は7日過ぎると安定するので心配な時期は術後7日までで以降は安心の為もう1週間診て通常は2週間で退院ですね」との回答でした。他の病院を調べてみると、ほとんどが約3週間で退院が標準と回答されました。これはどういうことなのか、米国人の身体が強く回復が早いのか、日本人が弱いので長期の入院が必要となってしまうのか?
更に調べますとその回答は、患者の体調ではなく保険制度の違いにあったのです。米国の保険は全て民間会社との契約になりますが、その多くの保険対象が”腎移植後の入院は5日まで”となっているので6日以降の入院費は全額自費となってしまいます。なので術後歩ける患者は退院されるとの事でした。その後は自宅から通うか、遠方の人や車いすの人は病院近くにある短期契約のアパートを借りて通院されるそうです。次に日本の場合、入院日数によって保険点数 (報酬)が変わります。術後2週間を過ぎると保険点数が段階的に下がり続けるので、遅くとも3週間迄は入院をさせ、その後は儲けが少なくなる為、退院させる。その様な背景があったのです。別に病院側も意地悪をしているわけではなく、経営上の切実な問題であり、次の患者様の為にもベッドを空けなくてはならないという理由もあるかと思います。大した治療もしていないのに検査だとかなんとか言っていつまでも入院させられた。そんな経験をされた方は少なからずいらっしゃるかと思います。上手な病院経営とは、ベッドの空きを無くし高回転で入院患者を入れ替える。それが腕の見せ所など言われるかたもいらっしゃいましたが、2019年3月3日、日本経済新聞の見出しに「減らぬ過剰ベッド※」の見出しで現在、日本全国で約20%以上のベッドが過剰であると見られており、その数は21万1千床にも達していると報じられています。
また、「ベッドが余ると外来で済む患者を入院させる動機が働く」と指摘をされています。千葉県東北部銚子市では適正なベッド数は2200床のところ3200床以上もあるので千葉県が増床の制限を通知したら、期日前に駆け込みで100床を積み増した病院があったそうです。もしこの病院に高齢者が風邪を引いていったら、医師から「精密検査をしましょう」と言われ採血・レントゲンに始まりさらに「入院して詳しく調べましょう」となりエコー・CT・MRIと進み、適当な病名を見つけて、さらに入院となるかもしれません。笑い事ではなく、本当にあり得そうな話です。医者の中でも患者がいなければ作ればよいなどと、うそぶく先生もいます。医師の高い倫理観はどこへいったのでしょうか。本来医療は私利私欲に満ちた経営であってはならない筈です。
話を戻します。本来患者の体調により入院日数は決まるもので、病院の都合であってはならないです。通常腎移植の場合、術後1~2週間の入院で帰国後、私共が案内する病院で1週間前後となっております。但し感染症等の合併症が生じた際は、根治するまでとなるので、さらに1~2週間伸びる場合もあります。肝移植の場合は現地で、2~3週間前後、帰国後は私どもが案内する病院で1~2週間ですが、こちらも体調により変化いたします。早い例では、4年前こんな事がありました。関西に住む、50代前半の男性で大手製薬会社のMR(医薬情報担当者)をしており、医療には精通されていた方でした。まず海外移植費用を捻出する為に、かかりつけの病院から余命半年の診断書を受け取り、それを契約している生命保険会社に提示し、リビングニーズ特約にて死亡保険金の90%、を先に受け取る手続きを済ませてから私共に相談に来られました。リビングニーズにより受け取った保険金は、その後、肝移植して元気になられても返金する必要はありませんが、移植手術後の申請または保険金の受領は原則不可となっているかと思います。MRをされているだけに話は早く、保険金を受け取ると、すぐに出発の決断をされました。病気はB型肝炎で移植以外に治療方法はありません。運よく到着後10日でドナーが出処し、術後4日目には歩行練習を始め、その日の夜、本人は早期の帰国を希望されたので、主治医に打診したところ承認が下りたので、6日目の帰国となりました。またフォローアップする先生も、私共が翻訳したメディカルレコード(診療情報提供書)を見て受け入れを承諾して下さったので、その後病院に5日入院したのち自宅へ帰られました。ご家族もビックリされておりましたが、一番驚かれたのは、余命半年と診断したかかりつけの病院(大学附属)です。移植後間もないので、受け入れは無理と言われてしまいましたが、最初に受け入れを承諾して下さった先生が電話にて、説明して下さったので無事帰宅となりました。渡航移植を考えていらっしゃるかたには、このリビングニーズ制度は参考になるかと思います。



copyright(c)the association for patients of intractable diseases all right reserved.
住所:〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2-5-14 WISE NEXT 新横浜901a