渡航前に患者の方が最も心配されることではないでしょうか・・ 移植センターでは年間7~800例前後の各種臓器の移植が行われています。 例えばA型の肝臓が出処した場合、移植希望者の中から最も適合したレシピエントを選択し移植が行われます。 同じA型のレシピエントは常時2~30名前後、待機されているので適合しない人へ無理に移植する必要はありません。
二ヵ月前の事ですが私どもが案内した肝臓移植希望者2名へドナー出処の一報が入りました。最初の連絡は「今日、移植をするかも知れません。身支度をして待機してください」との知らせです。この時点ではまだ移植は最終決定に至っていません。
患者はホテル内の荷物をスーツケースに整理して病院へ向かう準備と同時に家族や勤務先へ連絡を取りながら移植センターの指示を待ちます。 数時間後に届いた知らせは「今日の移植は2名とも中止です・・」後日、医師に中止の理由を尋ねたところ「ドナーは空輸にて運ばれてきましたが一つは状態が悪く採用できず、もう一つは適合の関係で韓国人へ移植しました」との説明でした。
欧米の移植センターであれば自家用ジェットやヘリが整備されていますが中国はまだまだ遅れており、民間の定期便に搭乗しハンドキャリーにて運んでいるのが現実です。 一方、日本では20年前から消防や警察のヘリを活用し臓器が運ばれており、最近ではドクターヘリや小型チャータージェットの利用も進んでいます。脳死判定を積極的に行い、ドナーを増やす努力が望まれるところです。
脳死ドナーによる肝臓移植は米国が年間約6000例実施されているのに対し日本では4~50例前後となっています。 近年、脳死ドナーを積極的に推進している中国は昨年度、約4000例の実績を計上しています。 米国との人口比から勘案すると将来2万例前後に達するとの声も聞かれますが、現場に携わっている私どもからすると改善の余地は多々あり遠く及ばないと感じます。
平成27年11月6日
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