度々、患者やご家族から訊ねられますが一言で申せば日本の医療レベルの方が数段優れているのが事実です。 日本では余命3ヵ月以内の患者に対しても肝移植が行われます。しかし、諸外国では末期の患者に対して原則、行われません。 術後のバックアップ体制に自信があり、ダメージコントロールが優れている証拠です。 ※但し、日本国内でも医療機関により優劣が相当ございます。 術後1年の生存率が90%を超える病院もあれば30%に満たない医療機関もあります。 また、医療機関の優劣(レベル)は生存率の数値だけでは説明できません。なぜならchild分類・MELDスコア―の高い患者やドナーが高齢など劣悪な条件での手術を避ければ生存率は高くなります。平たく申せばリスクの少ない患者だけを手術すれば成功率は高くなり生存率は伸びるから数値が良い病院がハイレベルであるとは一概に言えないのです。
日本ではchild分類13点以上及びMELDスコア―25点以上が脳死ドナー提供の対象となります。 一人でも多くの患者の命を救う観点から末期の患者を優先して肝臓手術が行われているのです。 ※上記の数値に達すると3ヵ月以内に半数以上の方が命を落とされます。
ここで予測余命に付いて申し上げます。 日本の医師が言う「余命3ヵ月」欧米では通常1~2週間と診断されます。 諸外国では回復の見込みが無い末期の患者に対して濃厚医療は施しません。 詳しくは下記参照 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001oab5.html
欧米がそうであるのなら中国はどうなっているのかと申せば肝移植を前提にした場合、最善を尽くし延命処置が行われますが概ね2か月前後が精一杯のところです。 この期間を過ぎると患者自身の体調も不良となり、例え移植したとしても術後の回復が望めないので延命処置は中断されます。
従って諸外国ではchild分類が13点に達すると移植手術は余り行なわれません。6点を超した時点から積極的に肝移植を行い12点が限界点と一般的には考えられています。
お手元の資料(血液検査)と照らし合わせてください。 http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/kangan/s1.html ※点数に関係なくがん転移があれば移植手術は不可となります。 多発性のがんや局所治療した後に再発した場合はその時点が移植のタイミングとなります。
私どもに問い合わせが来る方の8割以上は既に肝移植のタイミングを逸した「手遅れ」の状態です。 「なぜもっと早く連絡を頂けなかったのですか?」尋ねると「最近になり医師から移植しか助からないと聞かされました」と答えられます。 その主治医に確認すると「既に3年前にご家族に伝えています」とまったく違う答えが返ってきます。 私の経験からすると医師は数年前には「将来、移植の必要があります」とご家族に予告されているケースが殆どです。家族から本人へ正直に伝えていないのが実情と思われます。
それではなぜ、家族は医師からの説明を伏せたり事実を言わないのでしょうか? 多くの場合、目の前の本人が元気なものだから自身の肝臓を提供することに躊躇(ためらい)を抱き、あえて移植の話を避ける傾向があるからです。
また、患者自身もできることなら移植はしたくない、もっと正確に言えば「恐い」との考えが根底にあり末期になるまで海外移植は考えません。
いよいよ病状が悪化し腹水が溜まり、脳症になってから、あわてて私どもに連絡をしてくるケースが少なくないのです。 しかし多くの場合、海外に行くことは叶いません。
追記 本日現在、ICU(中国)にて治療されているM(50代・C型肝炎)さんのケースでは3年前に主治医から「移植をしなければ治らない」はっきりと説明を受けています。 早々Mさんは私どもNPOに電話をして来られましたが差し迫った状況ではなく「近日中に一度会いましょう」と話されましたが、その後ぷっつりと連絡が途絶え3年後の今年11月初旬になってから相談室に見えられました。 既に杖を使わなければ歩けない状態にまで肝機能は低下されていたのです。
私は手術前に「どうして1年前に電話してくれなかったのですか?」するとMさんは「そりゃ~菊池さん無理だよ、少し体がだるいだけで痛くもかゆくも無いだから~」この言葉が多くの患者さんの本当の気持ちではないでしょうか。
肝臓は50%前後機能していれば日常生活に支障はありませんが、ある日突然体調が急変するのも肝臓病の特徴です。
この1年child分類が8点以下で私どもに相談に来られた方は1名(60代)だけです。 この方はICUを2日で通過し一般病棟に移っても至って元気にされていました。 それ以外の方は10点以上に達しており、13点を超えている方も2名いました。
Mさんは3週間経ってもICUで治療されています。今でも気管切開しているので会話することも出来ません。本当に辛い日々と思います。(今週末一般病棟に移れる予定)
手術直前まで買い物に出かけたり、観光される方もいれば到着するなり脳症を発症し身動きができなくなる人もいます。 末期での肝移植は術後の回復だけではなく10年20年先の生存率にも明確な相違が確認されています。
※以前とは違いネットで病名や検査数値を入力すれば余命が簡単に分かる時代になりました。 注意すべき点として海外は日本ほど末期の患者を対象にしていない事です。 平成25年12月17日 ※Mさんは翌日の12月18日に一般病棟に移られました。12月20日
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