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転換期を迎えた中国移植事情 2012年02月01日

近年、中国では脳死ドナーによる移植が増加傾向にあります。
実際の移植件数は公表されていないので実態を正確に把握する事はできませんが、昨年の4月初旬に日頃お世話になっている外科医の先生から「事故に遭われた方の脳死ドナーでも構いませんか?」と問いかけられたことがございます。話を聞くと交通事故で脳を損傷した20代の男性で数日内に家族と臓器摘出の合意がされるとのことでした。
これに対して「ドナーに関しては先生の判断にお任せします。患者様に適合しているのであれば構いません」と返答しました。すると先生は「了解しました。こちらで判断させて貰います」と軽快に言葉を返されました。中国に於いても脳死ドナーの適用が積極的になされるのであれば欧米への渡航移植と何ら遜色がなく倫理問題も解消されます。
この件をきっかけにその他の医療機関にも脳死ドナーの件を尋ねたところ意外な事実を知ることができました。私達日本人が考えている以上に脳死患者から臓器提供は古くから行なわれておりその広がりは中国全土に及んでいるとの事です。
以前からドナーについての情報は性別・年齢・血液型等の基本的な事しか知らさせないことになっています。ドナーが死刑囚か事故死なのかはレシピエント側には伝えない規則となっています。私どもが知らない間に脳死のドナーの移植が行われていたかもしれません。

北京の中央政府は数年前から脳死ドナーを積極的に取り組むように地方政府に対して通達がなされています。それと同時に北京衛生部(日本の厚生労働省に該当)に於いても脳死基準の策定に付いてスイスの製薬会社のノバルティスに参加を求めています。
しかしながら、それらの事実は余り公表されていません。また脳死基準に付いてのガイドラインも関係者の口からは聞くことは叶いませんでした。「快復の見込みが無い患者」それが脳死なのか植物人間を指すのか判然としない部分があります。
脳死判定以外に中国特有の事情も問題を複雑にしているようです。それは提供者の家族は少なからず謝礼金を求めることです。臓器の提供は日本を含めて欧米でも無償でなければなりません。一方のドナーの家族にすれば臓器提供により恩恵を受ける患者から謝礼を受け取るのは当然との考えを持つことから難しい側面もあるようです。各種の保険制度により医療費の免除や生活費の扶助など社会体制が整った国と、お金が無ければ十分な医療も受けられず生活保護の制度もない国情には大きな隔たりがあります。
このように中国は様々な問題を抱えながらも今後も脳死ドナーは増加すると思われます。一部を除いて西側世界に公にされる日は先になると思いますが、全世界の多くの患者の皆様に移植のチャンスが増えることを期待しています。



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