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仲介費用の妥当性について 2013年12月09日

海外の病院を仲介・斡旋した者に対してどのぐらい報酬(謝礼)を支払えば良いのか難しい問題です。
海外で渡航移植を済まされた患者が帰国後に既払い金の返還を求めたケースがございます。
原告(患者側)は海外への臓器移植の有償斡旋は不法行為となるので支払った手数料は「不法利得」に当たると主張し、仲介した医師に対して返金の申し立てをしました。(臓器売買の拡大解釈)

裁判所は「渡航移植の斡旋は違法ではない」と原告の主張を退けました。
その後、原告は仲介手数料が高額であると主張を変え係争となったのです。

この裁判に於いて被告人(医師)から私ども「難病患者支援の会」に意見を求められ裁判所に下記の意見書を提出し採用されました。
※個人が特定される表記は仮名または伏せてあります。

意見書
・・・地方裁判所

田中春雄の渡航肝移植に付いて意見を述べます。

事実関係について
• 肝臓移植しか命を救う方法は他にない状況であった。
• 治療の延線上に肝移植があり前後して○○先生が責任を持つ約束がなされた。
• ○○先生は嘆願書並びに誓約書を差し入れた。
• 田中さんは現地到着3日後に肝移植が行われた。

上記のことから田中さんの肝移植が実現できたのは○○先生の尽力に他なりません。
渡航移植に際し主治医がその責任を負うとの誓約書を差し出すことは極めて異例でありまた現地入りした3日後に肝移植が行われたことも極めて稀なケースと言えます。

経緯について
昨年の5月頃、○○先生より田中さんの肝移植に付いて私どもNPO法人へ相談の電話が入りました。
既に、田中さんの容体は差し迫っており緊急を要しているとのことでした。
渡航移植は多額の費用を用意しなければなりませんが○○先生曰く「資金の面は心配いりません」との話を受け早速インド・米国・中国の医療機関7カ所に照会をしましたが、米国とインドの各病院は「待機リストに登録しても手術は早くて3ヵ月先」待機中に死亡する可能性があるとの理由により先方より断られました。

その中で唯一、中国の・・・医院の・・教授は「日本の医師がすべての責任を負う」誓約書の提出を条件に引き受けると回答されました。

私どもの活動を支援してくださる複数の医師に相談を持ち掛けましたが、どなたも誓約書の提出は拒まれました。
上記の経緯を○○先生に説明した上で私どもは仲介を断念しました。

仲介費用の妥当性について
肝臓移植は、まさに生死を分ける治療であることから、その実現に際して中心的役割を果たした者にどのような対価を支払うべきか、また何を尺度として評価するのか、適切と思われる判断基準はございません。

例えば、日本国内で子供の心臓移植をした場合、手術費用は200万円(入院費含まず)超えることはありませんが、米国で移植治療を行えば1億数千万の費用が必要となります。
米国でも臓器売買は禁止されているので医療費以外は関係者への謝礼金となります。
日米の物価の差、術後の入院費用など加味しても関係者へ多額の礼金が支払われている現実があります。
この謝礼金には定まった基準は無く個々の事案ごとに当事者間の合意に基づいて決められているのが実情です。
子供の移植が成人より高額であったり本来、肝移植と比較して低額であるはずの心臓移植が高額となるなど、渡航移植には医療費(実費)の積算という合理的概念が存在しません。
命を救う方法が移植術以外にない場合、依頼人(患者側)の要求度に応じて謝礼金を含めた総費用が双方合意の下で決められます。
渡航移植に関する、これらの特殊性をどのように酌量するか難しい問題となります。

※注意すべき点として関係者へ支払う謝礼金はすべて医療費として計上されるので医療機関が内訳明細を提示することはどこの国に於いてもございません。
渡航移植に関する既払い金の返還訴訟の判例では「当事者間の事前合意」の有効性が判断されています。

敢えて仲介費用の妥当性を判断するならば下記の事例があります。
日本国内で行う肝臓移植の費用は227万5800円となります。(資料1)
術後の投薬並び入院費用を加算しても2000万円を超えることはそうそうございません。
移植術はどこの国に於いても使用する設備・薬剤・プロトコール(段取り)は世界的に標準化されており差異はございません。また大人と子供の手術費用の差も生じません。
その他、渡航される国の物価水準と人件費を考慮する必要がありますが、その差は数百万円のレベルです。
しかしながら実費以外に関係者への謝礼金を別途用意しなければ移植治療は受けられません。
この謝礼金ですが手術費用に含めて請求されるので金額がいくらになるか判然としません。
ネット上で公開されている米国での肝臓移植は別紙(資料2)の通り9250万と7500万円があります。
上記の金額から医療費の実費と渡航費用や滞在費などの諸経費を差し引いた残額が関係者への謝礼金と推察できます。
この謝礼金の分配ですが患者を送り出した医師と引き受け医療機関(医師)が分け合うことが非公開ではあるが慣例となっています。

あとがき
命に関わる臓器移植を経済取引の対象とすることは、人々の感情に著しく反し移植機会の公平性を損ない、さらに善意・任意の臓器提供という移植治療の基本的な考え方にも支障を来します。
しかしながら、死期が迫り一刻を争う状況下に於かれた患者が唯一助かる道が渡航移植であり、残された最後の望みとも言えます。
また現実問題として多大な費用負担を伴う選択であることも事実です。
                    平成25年3月21日
                  内閣府認定・非営利活動法人
難病患者支援の会 理事長 菊池真美

○○先生は目の前の患者を救いたい一心で行動されました。また患者側から受け取った手術費用3000万円(入院・手術・謝礼金の総額・滞在費含まず)医師による仲介・斡旋としては良心的であったと思います。

本件は裁判所の和解案(被告人は原告に費用の一部200万円を返金する)双方これを受け入れて結審されました。

※文中の資料1は厚生労働省の保険点数(費用)です。資料2はネット上で公開された会計報告を提出しました。
※渡航3日目で手術が行われましたが血液型により数ヶ月待たされることもあります。渡航計画は余裕をもって臨むことが最も重要であることをご理解ください。

事務局より
手術費用は渡航先や医療機関により様々です。
一個人が海外の医療機関と交渉することは容易な事ではありません。
さらに約束した条件を順守させることも、たやすい事ではなくトラブルが生じた際は患者側が弱地に立たされてしまうこともございます。

確実な渡航計画を立案・サポートするのが私どもの使命であり存在意義と考えています。
また帰国後の受け入れ病院の選定はとても重要となります。既に渡航されている方もご相談ください。



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