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海外での生体移植 2012年07月27日

海外での生体移植・・・・・

欧米では待機リストに登録すれば3〜4年で移植治療が可能なので日本のように親族から臓器を貰うケースは余り多くはありません。生体移植を希望する人は主に医学的理由または3〜4年の待機期間を待てない人達です。

日本では希望すれば誰もがドナーの待機リストに登録されます。しかし海外は同様ではありません。高度医療である移植治療は経済力がある方、もしくは高額保険に加入されている人達に限られます。臓器を貰えても保険に加入していなければ手術代金(腎移植・1000〜1500万円)以外に術後の免疫抑制剤や定期検査などに毎年150〜250万円の医療費が自己負担となるからです。仮に10年生着するとなれば総額は3000万円以上にも達してしまいます。

※透析費用は年間約1400万円になります。10年では1億4000万ですが、こちらは無保険者でも扶助が受けられます。
透析は移植治療するまでの一時的措置と考えるのが一般的で日本のように終生透析をするとの考えが欧米人にはございません。

第三者のドナー

世界的に生体移植は親族以外の第三者からの提供が年々増える傾向にあります。腎移植を例にすると米国では60%以上、中国では90%以上が親族以外からの提供です。EUに関しては公表されている数値が見当たらないので確かなことは言えませんが経済的に余裕のある人は東欧に行かれている事情を推察すれば、米国と同じ程度かと思われます。

中国の事情

中国は保険制度が十分に整備されていないため、患者は移植後の継続治療に多額の費用を用意しなければなりません。手術代金に限れば20万元(入院費込み約260万円)程度ですが術後の免疫抑制剤や定期検査など医療費が毎年6〜8万元必要となり、その費用負担は終生続くのです。

日本では術後に身体障害者1級の認定を受けて医療費の免除や障害者年金給付等の手厚い制度がありますが諸外国にはございません。※欧米でも高額保険に加入している人以外は多大な経済的負担を強いられます。手術費用に加えて術後の医療費なども併せて勘案すると中国で移植を受ける日本人よりも現地の人の方が総体的な負担は重くなっているのが現実です。他国と比較して日本はたいへん恵まれている環境にあると言えます。

近年、中国では保険の適用範囲は拡大されています。しかし免疫抑制剤などの輸入薬剤はすべて自己負担です。その様な事から、現実問題として移植治療を選択される人は富裕層に限られています。移植を希望される経済力の有る人は、そもそも身内から臓器を貰うことなどは考えず関係者に謝礼金を支払い提供を受けるのが一般的です。私どもが訪問している各医療機関からのヒアリングでも第三者ドナーによる移植が主流となっています。

死刑囚の減少

以前なら医療関係者に謝礼金を払えば優先的に死刑囚の臓器を貰えましたがオリンピックを境に死刑の執行が減り現在は入手がたいへん困難となっています。中国経済の発展により重犯罪は年々減少しています。また富裕層が増えたことにより移植して健康を取り戻そうと望まれる人は年々増える傾向にあるのです。

ドナーの獲得競争

北京市内で移植を行っている病院は腎臓14・肝臓13・心臓4・肺5施設がございます。(腎移植は認定病院以外でも行われています)。数名の死刑執行により臓器が出処しても北京市内だけでも上記の医療機関が入手を望まれます。
さらには臓器を得られたとしても各病院内にはドナーを待つ患者が数十人以上待機しているので外国人が上位に割り込むのは以前ほど容易ではなくなりました。

米国の生体移植

米国では60%以上が第三者と前述しましたが、実際はもっと多いのではないかと言われています。その根拠として、ある医療機関が臓器提供者の生活状態を調査したところ全体の90%が保険に加入していない低所得者であることが判明したからです。これにより貧困層から富裕層へ臓器が提供されている構図が浮かび、ドナー側に何らかの対価(謝礼)が支払われている可能性が指摘されたのです。もし日本で同じ報道がされたら、たいへんな騒動になりますが、現地のマスコミも一般市民の間でもたいした話題になりませんでした。

米国でも臓器売買は禁止されています。従って「無償提供である」と宣誓書へサインしなければ移植は行なわれません。医師は両者がどのような関係なのか、友人または親族なのか詮索することはしません。その後、両者にトラブルが生じても医師に何ら責任はないのです。術後、臓器提供者が「実は・・・」と言ったとしても宣誓書が全てなので周囲の人も裁判所も聞く耳は持ちません、むしろ軽蔑されるだけです。それが契約社会である欧米の姿なのです。

追記

米国には保険料を支払えない国民が約30%います。これら貧困層の人達は病気になっても高額な医療費を用意しなければ治療はして貰えません。オバマ大統領は就任時に「世界一の経済大国でありながら歯医者にも行けない国民が
3割もいる」と全国民の保険加入制度を提唱しましたが今日まで実現していません。多くの米国市民は「保険に加入するか否かは選択の自由である」とコンセンサスが得られなかったのです。

日本と諸外国では医療に対する認識の違いがこれほどあるのです。日本人特有の常識や価値観を尺度に諸外国を批評すると適切ではないことがあることを多くの日本の方にも知って欲しいと思います。



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