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肝移植の現況 2012年05月28日

このホームページをご覧の中には医師から肝移植は難しいと先生から告げられている方もいらっしゃるかと思います。

わが国では2005年をピークに肝移植は減少しています。その理由として下記のことが考えられます。

•諸外国と違い生体間の移植が主流のわが国では適用症例が限られてしまうこと
•医師または医療機関が術後の成績(生存率)を意識してリスクの高い手術を避ける傾向にあること
•医師は事前に臓器提供の有無を親族に打診して回答が得られない場合、患者に対して移植以外の治療を勧めること
•近年ドナー提供者へのリスク説明が厳格に行われ辞退する人が以前よりも増加傾向にあること
•な体にメスを入れることに抵抗感を持つ人が増えたこと

肝移植は生きた人から貰う「生体間部分肝移植」と亡くなられた人から貰う「死体全摘肝移植」がございます。
手術の安全性や生存率は全摘出した肝臓を移植する「死体移植」が優れていることは国内外問わず外科医の一致した見解です。
肝移植の先進国である米国は6291例(2010年実績)手術が行われています。この内、親族間の生体移植は282例(全体の4%)に過ぎず年々減少しています。
(資料http://www.asas.or.jp/jst/pdf/factbook/factbook2011.pdf)

諸外国では一般的に肝移植と言えば死体全摘移植を指します。日本とはまったく正反対な状況になっています。
日本で安全度の高い全摘手術が僅かなのは脳死提供者が諸外国と比較して極めて少ないからです。これに付いては医療機関並び監督官庁が協力して早急な対策が待たれるところです。

生体移植と死体移植の優劣を論じましたらが、ここで一つの疑問が沸いてきます。
生体と死体の国内比較データーではさほど差はなく、むしろ生体の方が良い場合もあります。
これは何故でしょうか、生体間の移植に優位性があるならば世界中でもっと採用される筈です。
理由を端的に申せば生体移植の場合、リスクの少ない患者だけを選択して移植が行われているので、必然的に生存率が高くなっているに過ぎないのです。

本来、肝移植は相当数の患者に対して最適な治療方法となっています。しかし生体間となると条件は限定されてしまいます。また、そもそも親族に提供者がいなければ手術は行なえません。

例えば肝疾患の患者が10人いたとします。肝移植の適応検査の結果、脳死ドナーであるならば7人が適応と判定します。生体なら「条件により」6人が適応と判断がなされます。この「条件により」とはドナーとの適合条件を指します。①血液型の適合②ドナーのサイズ③ドナー年齢などが大きな課題となります。
運よく親族に適合者がいること、加えてドナーの承諾が得られた場合に限り生体間の移植は可能となります。いったいどのぐらいの割合になるかと推測すれば1割に満たないと思われます。
その理由として、諸外国と違い日本では保険料も支払えない低所得者であっても生活保護を受けた場合、親族に臓器提供者がいれば無料で手術は受けられます。また年間100万円以上必要となる術後の免疫抑制剤等の継続治療費も無料となります(通常の所得がある人は月間、最大3万円程度)
世界中どこ探してもこの様な条件で肝移植が行える国は日本以外にございません。
費用の負担も少なく、たいへん恵まれた条件にありながら年間5~600例の肝移植しか行われていない実情と、毎年3万人を超す肝不全の死亡数を勘案すると生体間移植の適応はそう多くないと推測できます。

医師は早い段階から肝移植が根本的治療になると判断していても、ほとんどの場合直ぐに患者本人には伝えず事前に家族に打診(提供の意思)します。
もし良好な回答を得られた場合は患者本人に対し「将来肝移植が必要になるかも知れませんよ」と予告したりします。
ただ、ご家族が迷われたり躊躇されると、それ以上は強く言わず治療方針も肝移植を選択から外すようになります。
やがて患者本人が体調の異変を感じ移植治療を意識し始める様になり、主治医に「移植すれば治りますか?」と尋ねたりしますが、家族からの提供が得られないと認知している医師は移植の適応症例ではないと説明したりします。
これは親族間の人間関係に配慮してのことです。またご家族から医師に対して「移植の話は持ち出さないでください」と止められているケースも少なくありません。

ネットの情報や文献などから患者本人が移植治療は有力であると認識するようになり、医師に詰め寄った話をしても「ご家族との適合も調べたのですが残念ながら・・」と否定されるのが通例です。

勿論、本当に適合しないケースや浅田真央さんのお母様のように娘さんから申し出があっても当人が「娘の体に傷つけたくないと」と患者自身が辞退される場合もございます。

移植をすれば助かる人でも実際に手術を受けられる可能性は生体間移植が主流の日本ではその機会は限られてしまいます。

肝移植を済まされた患者さんに「海外に行く判断はご自分でされたのですか?」尋ねると「主治医の先生から海外を勧められました」と答える人が殆どです。
(渡航移植に対して否定的な主治医ですと海外の話題は持ち出さず移植以外の治療を勧められます)
私どもに相談に見えられる患者さんの半分以上の方が移植のタイミングを逸し、既に手遅れとなっています「なぜもっと早く連絡をくれなかったのですか」と尋ねると「主治医の賛同が得られなかったので・・」または「家族が反対するもので・・・」などの話を多く耳にします。
主治医や家族の見解及び倫理観が患者の生死を分けてしまうのが肝移植を取り巻く大きな課題です。

本来、生死を分ける判断は患者自身が決める問題ではありますが実際、周囲の反対を押し切り海外に向かうことは容易な事ではありません。加えて1千万円を超える治療費も大きな負担となります。

日本を除き年々、世界中で増え続ける肝移植は有力な根本的治療方法に変わりはありません。
余裕を持って渡航移植の是非を検討し、我が身の人生を選択されるべきではないでしょうか・・・・



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